2017春 SPRING SEMESTER 2017

4月10日5限@λ407
顔合わせ、参加学生と教員の自己紹介・研究関心領域共有、今学期の活動内容の打ち合わせを行いました。
First session: Discussion on reading assignment; General planning for this term

4月17日 5・6限@λ407 文献購読ディスカッション+今学期の取り組みの構想
【文献購読ディスカッション】
教員が自身の研究分野・関心分野に根差しつつ、本プロジェクトメンバーである他の研究分野の教員・院生にも関心が持てるのではないか・議論ができるのではないかと考える文献を一人一つ提案し、それを事前に読み込んだうえで集まり、共同で討議します。
【Reading and discussion】 We will discuss the assigned readings that the faculty members will select from their own areas of expertise for their relevance to this graduate-school project (each faculty member teacher will select one reading).
今回の担当は、杉原・藤田でした。

【杉原由美の提案文献と議論報告】
Ryuko Kubota ‘Critical multiculturalism and second language education’,Critical pedagogies and language learning, B. Norton & K. Toohey (Eds.), 2004, Cambridge University Press
この文献を選んだ理由は、プロジェクト名にも冠している「多文化/Multicultural」概念をどのように捉えるのかを議論するためでした。本プロジェクトは、単に多言語性・多文化性を礼賛するのではなく、その社会が「共生を志向しているか」をはじめとした問い立ての下に、冷静かつ批判的な思考、新たなビジョンの提示をめざしていますので、刺激的な議論になりました。
具体的には、文化主義のベクトル上にある態度(文化相対主義的な公正さを重視するソフトな姿勢から、文化差によって生じる権力・マジョリティの持つ特権を認識するというクリティカルな姿勢まで)の中で私たちの位置取りについて議論を行いました。その上での言語教育として何ができるのかという話題は話が収束せず、今後の課題となりました。
We discussed  the topics such as ‘What the term Multicultural actually means in our `Multilingual and Multicultural Society’ project?’ ‘What are we actually able to do in second/foreign language teaching and learning?’ so on.

【藤田護の提案文献と議論報告】

【今学期の取り組みの構想】新しいプロジェクトを推進するために、今学期にメンバー協働で取り組む内容について話し合い、以下のような共同研究を行う計画を立てました。
研究概要:多言語・多文化に関わる事象や課題に向き合う視点を構築するための第一歩として、日本における在留外国人の中でも人口規模が相対的に大きい(1)韓国・朝鮮語圏出身者、(2)中国語圏出身者、(3)スペイン語圏出身者が集居しているコミュニティにおいて聞き取り調査を実施し、各地域に居住する人々の言語生活や民族意識、社会に対する葛藤などの解明をめざす。本研究により各コミュニティにおける普遍性や特殊性に向きあう中で、現在の日本社会が直面している多言語・多文化社会の新たな課題を把握し、多言語・多文化社会の向かうべき方向性を提示することが可能になると期待される。
【General planning for the Spring term】 As a starting point for this new project, we will discuss the common initiatives to be developed this term.

5月15日(月) 5・6限
【平高史也の提案文献と議論報告】
Carol W. Pfaff, Jingfei Liang, Meral Dollnick, Marta Rusek and Lisa Heinzmann (2014)Minority language instruction in Berlin and Brandenburg. Overview and case studies of Sorbian, Polish, Turkish and Chinese. In: Grommes, Patrick, and Adelheid Hu. (eds.) Plurilingual Education, Amsterdam: John Benjamins Publishing Company.
ドイツにおける第2言語習得や母語・継承語教育に関心があるので、この文献を選びました。また、一時期ベルリンに住んでいる日本語母語話者の第2言語としてのドイツ語習得を研究していたこともあるので、関心を抱きました。個人的には東ドイツ時代のベルリン・フンボルト大学で日本語を教えたり、再統一後はベルリン自由大学に留学したことなどもあって、ベルリンには近しさを感じています。
ドイツをはじめヨーロッパでは、近年、統合政策の進展や移民排斥の動きのためか、移民の文化やその子どもの母語教育があまり注目されていないのではないかと思います。学校で十分な教育が受けられるかどうかは少数派の子どもたちの将来にとって決定的な意味を持ちますが、その際、この論文で述べられているように、言語の威信や親の態度が母語での教育を可能にする鍵になるかどうかなどについて議論しました。
We discussed the topics such as ‘Can we treat all languages equally and fairly, when the prestige of languages play an important role?’ ‘Do language ideologies, attitudes and expectations influence how pupils and their parents set their personal priorities?’ so on.

【学生による中間研究発表】
これまで各自が研究してきた成果を中間発表として共有し、多角的な視点からこれからの研究で深めていくべき点及び研究方法についてディスカッションをしました。
政策・メディア研究科修士1年 荒木萌「ドイツの地方都市パッサウにおける難民支援と言語教育」
政策・メディア研究科修士1年 有馬一起「『資産』としての母語教育と日本の多文化共生社会」
研究生 Estelle Rust “Socio-Cultural Identity in Assistant Language Teachers and its Impacts on English Education.”
総合政策学部4年 山田慎太郎「アイヌ散文説話におけるトパットゥミ(topattumi)の分析からアイヌの人々の生き方を読み解く」
(文責:荒木)

6月12日5・6限@λ407
【アロツ・アインゲルの提案文献と議論報告】
May, Stephen, “Rearticulating the case for minority language rights”, Current Issues in Language Planning, Volume 4, 2003, Issue 2, p. 95-125.

The question of minority languages (i.e. the languages of national, indigenous, and inmigrant minorities) is of great relevance for understanding contemporary multilingual-multicultural societies. What kind of rights should linguistic minorities enjoy? Should minority languages be preserved and/or revitalized? Should measures be taken in order to counter the seemingly unstoppable trend toward language loss that we observe around the world today? In order to reflect upon and give answers to these questions, we read and discussed May’s paper, which reviews some of the main recent criticisms that advocates of minority language rights have received and proposes interesting ways in order to bring forward a more robust defense of the rights of linguistic minorities.

【伴野崇生の提案セッション】
日本在住の難民の方をお招きし、お話をうかがいました。

7月10日4・5限@λ407
【髙木丈也の提案文献と議論報告】
前田達郎(2005)「「在日」の言語意識-エスニシティと言語」真田信治 編『在日コリアンの言語相』和泉書院
9月に予定している大阪 鶴橋のコリアタウンでのフィールドワークのための準備として、在日コリアンと言語に関する論文を選びました。この後、7月26日にミーティングを行ない、具体的な調査の計画を立てる予定です。

【学生による中間研究発表】
これまで各自が研究してきた成果を中間発表として共有し、多角的な視点からこれからの研究で深めていくべき点及び研究方法についてディスカッションをしました。